2025.09.25
ファッション
第2回 2025年秋冬コレクションから見るトレンドカラーとインテリア<レッド・ピンク編>
2025年秋冬のトレンドカラーの第二弾レポートは、赤とピンクについてお話ししたいと思います。
まずは、今年の秋の赤は、明度が高い鮮やかな赤ではなく、深くダークな色調の赤が主役になっていて、落ち着いた大人の雰囲気が魅力に。ピンクも、バービーの世界のような甘くヴィヴィッドなものとは異なる、少しダスティで上品なピンクが登場しているので、「ピンクが苦手」という人でも拒否感なく、コーディネートが楽しめそうです。
2. センシュアルで深い赤
今年の夏にもトマトレッドなど鮮やかな赤が出始めていましたが、秋冬にはぐっとディープな趣を増して、真紅からバーガンディ、ベリー、ボルドーなど、大人っぽく奥深い赤のバリエーションが豊富に登場しています。
ブラウンでも紹介したマックスマーラは、19世紀の英国の作家、ブロンテ姉妹をコレクションのインスピレーション源にして、荒れ野に実るようなベリーレッドのロングコートでファーストルックを飾りました。女性の奥深い強さや秘めたパッションを感じさせる色で、『嵐が丘』の主人公のような、運命に翻弄される激しいドラマを感じさせてくれるイメージ。コートだけでなくニットウェアなども同色で展開されています。
ステラ・マッカートニーはボルドー色のドレスで都会的でスタイリッシュな女性像を押し出し、クロエは70年代のヒッピーテイストを感じさせるレザースタイルを赤茶色で表現。レザーも、ブラウンよりも華やかさが加わる点が魅力です。
大人のテイストの赤なので、赤系だけでまとめると大胆で上級者の着こなしに。他の色と合わせるなら、黒、茶、グレーなど落ち着いた深い色合いを選ぶと、マチュアな雰囲気を一層高めてくれます。
写真ご提供・問い合わせ先
・Max Mara / マックスマーラ ジャパン 0120-030-535 https://jp.maxmara.com
★インテリアのヒント
主張の強い赤はインテリアとして選択するのが難しい色でもあります。しかし、大胆さを恐れずに取り入れると、他の色にはない個性的で高級感のある雰囲気が演出できます。
茶系との相性もよく、ゴールドのインテリ小物を合わせれば一気にリッチなムードの空間に。ベリーレッドの壁は、花モチーフのアイテムによってロマンチックな気分に包まれるので、特別なコーナー作りにおすすめ。赤一色だと強すぎると感じる場合は、壁紙で取り入れるのも洗練された印象になります。
3. 抑えたニュアンスのあるピンク
深めの色がメインを占める2025年秋冬シーズンのなかで、一際目立っていたのが、ピンクのバリエーションです。注目は、甘く鮮やかなピンクではなく、スモーキー調や、ダスティなニュアンスをはらんだ大人っぽいピンク。
「女性らしさの再定義」がファッションにおける重要なテーマとなったこの秋冬シーズンは、「甘すぎる」と敬遠されたピンクを、自分なりのスタイルで更新しながら楽しむ方法が提案されています。
60年代調の懐かしい「女らしさ」を再解釈したプラダでは、ノスタルジックなピンクの花柄で「古くささ」を「新鮮さ」に変える魅力を表現。
ミュウミュウは、淡い色のピンクのトップスをブラウン、グレーといった落ち着きのある色と合わせて、クラシックな着こなしに明るさを加えています。クロエのサーモンピンクのドレスは、ロング丈でもフェミニンさをフレッシュに表現する効果を発揮しています。
★インテリアのヒント
「甘さ」を抑えた微妙なニュアンスのあるピンクは、意外にもさまざまな色との相性がいいということを、インテリアでも実証してみてほしいポイントです。また、光によってかなりニュアンスが変わってくる色なので、自然光が差し込む部分にピンクを配すると、時間によって雰囲気の変化が楽しめるのも魅力。
実は、トイレの壁に使用すると、狭い空間にも温かみが生まれるので意外性のあるアイデアとしておすすめです。黒やダークブラウンなど重たい色の家具と合わせても、ピンクの柔らかな明るさによって空間全体の調和が生まれます。壁紙で使用する場合は、ジオメトリックなパターンを選ぶと甘すぎずに、モダンな雰囲気を演出してくれるでしょう。

渡辺三津子氏 プロフィール
資生堂の企業文化誌『花椿』から編集のキャリアをスタートし、複数のインターナショナル・ファッション誌を経て、2000年『ヴォーグ ジャパン』編集部へ。2008年に編集長に就任。2022年に独立し、ファッションジャーナリスト、コンサルタント、エディターとして活動中。