2026.04.09
2026年春夏コレクションから見るトレンドカラーとインテリア 第1回<ホワイト編>
「自分を表現する、多様な白」
毎年12月に発表されるパントン社による翌年のトレンドカラーが、近年注目されています。
この連載コラムでも、2025年のそれが「モカ・ブラウン」であることに触れましたが、2026年は「クラウド・ダンサー」という白がトレンドカラーとして提案されたことが話題を呼びました。なぜならば、色と呼ばれないこともある白を“流行色”としてあえて認定したことが、パントン社としても初のことだったからです。
先ほど「色と呼ばれないこともある」と語った白ですが、実際には、ひと言で「白」と言っても、多くの違う表情を持った種類が存在することをご存知でしょうか。
「クラウド・ダンサー」は、柔らかさとピュアさをあわせもつ、まさに空に浮かぶ「雲」のような白。自然の営みが、私たちを包み込んでくれるような優しい温もりを感じさせてくれるのが特徴です。ファッション界でも2026年春夏コレクションには白が多く登場し(「クラウド・ダンサー」的なものだけでなく)、今シーズンを代表する流行色になっています。
特に今季のランウェイで目立ったのが、全身を白でまとめたスタイルです。実は皆さんもご存知のように、白は汚れが目立ちやすいということと、特徴的な制服や正装に用いられるので、日常のシーンで全身を白で装うのはとても特別な印象を与えます。従って、少々現実離れしていて、しかし、それだからこそピュアな精神性を表現できるスタイルにもなりうる。デザイナーたちが、こぞって白のルックに挑戦したのは、きっとどこか、時代の変化の中で、人間らしい優しさと誠実さを表現したかったからではないかと想像できます。「原点に立ち返る」といった感覚なのではないでしょうか。
2026春夏シーズンは、多くのブランドのクリエイティブディレクター交代が話題になったシーズンでもあり、その観点からも彼らは白のルックにブランドの「リスタート」の意思を込めたのだと言えるかもしれません。
ボッテガ・ヴェネタとセリーヌでは、全身を覆う白のロングドレスでロマンティックな女性像を提案。ディオールは、クチュールメゾンのアイコン的なリボンをあしらったホワイトドレスを白いパンプスに合わせたピュアなエレガンスを表現し、ジル・サンダーではメゾンのDNAであるシンプルな構築的コートを白で発表していました。すべてそれぞれが、新クリエイティブディレクターによるブランドの現代的“再解釈”のクリエイションでした。
全身でなくとも、白をメインにした着こなしももちろん多く登場しています。
上記と同じく、新クリエイティブディレクターが就任したシャネルでは、上下白のチュニックスーツに黒のラインを入れることで構造を引き締め、あえてグリーンのバッグを合わせて着こなしにリアルなリズムを演出。エルメスは、白のスポーティルックにブランドのアイコンである乗馬ブーツとスカーフをあしらい、日常に白を取り入れるコーディネイトのヒントを与えてくれています。
★インテリアのヒント
言うまでもなく、インテリアの世界でも白は、カラーパレットのベースとなる重要な役割を果たす色です。白の中にも、豊かな表情をもつ多種多様な白があることを知ると、インテリアと色に対する世界観が変わるといっても過言ではないでしょう。
例えば、Farrow&Ballには、白の塗料が6つのグループに分けられて多数存在します。白を「ニュートラルカラー」と呼び、そのベースとなる色味(グレーやグリーン、紫系などのアンダートーン)の違いによってカテゴリー分けされ、それぞれが、「温かみ」や「クールなメリハリ」、「繊細さ」など、異なる特徴をもっています。
6つのニュートラルグループ






色見本を見ると、「これが白?」と感じるような色もありますが、インテリアのように広い範囲で使用される場合は色の感じ方や、部屋に差し込む日の光でも雰囲気が変わるので、そこがファッションと少し異なる点かもしれません。
しかし、服にも素材の違いで同じ白でもまったく異質に見えることが多々あり、白を幅広く捉える感覚はファッションにも役に立つのではないかと感じます。
白の多様さは、黒という色との対比で考えると、よりわかりやすいかもしれません。黒は光を最も吸収する色ですが、反対に白は光を最も反射する色です。すなわち、黒は光の反射や他の色との対比によって影響を受けにくいのに比べて、白は光とともに変化し、他の色を最も純粋に活かす色といえるでしょう。
今こそ、ファッションでもインテリアにおいても、白を「無個性」や「無難」というイメージから救い出し、自分のスタイルを表現する豊かさの基本として捉え直す絶好の機会といえるかもしれませんね。
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渡辺三津子氏 プロフィール
資生堂の企業文化誌『花椿』から編集のキャリアをスタートし、複数のインターナショナル・ファッション誌を経て、2000年『ヴォーグ ジャパン』編集部へ。2008年に編集長に就任。2022年に独立し、ファッションジャーナリスト、コンサルタント、エディターとして活動中。
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