2026.05.07
2026年春夏コレクションから見るトレンドカラー第2回
「強さと優しさ、どちらを選ぶ? ヴィヴィッドとパウダリーカラーの競演」
前回は、2026年春夏のトレンドカラーとしてまず白のバリエーションをご紹介しましたが、次は「白以外の色」に目を向けてみましょう。とはいえ実は、色の名前だけで流行の順番をつけることが難しいくらい、さまざまな色が甲乙つけがたく登場している、というのが今季の大まかな状況になっています。
感覚的に今シーズンのカラーバリエーションを語るとするならば、「強さ(ヴィヴィッドカラー)と優しさ(パウダリーカラー)の共存」と表現できるのではないか、というのが私の印象です。
例えば、強い色の代表として目立つのが、トマトレッドやエメラルドグリーン、青系ならコバルトブルーやロイヤルブルー、といった鮮やかな色調。それと同時に、同系色のグループでも、アイスグリーンやベビーブルーなど、淡く、ときに優しくパウダリー(粉をかけたよう)な色調が同じくらいみられるのです。
このようなシーズンにおいておすすめしたいのは、まず「自分の気分を第一に色を楽しむこと」です。特に春夏シーズンは、秋冬よりもライトな感覚で、カジュアルにファッションを楽しめる季節。今まで苦手意識や、「似合わない」と思い込んでいた色をこの機会に試してみてはどうでしょうか。今シーズンは特にどんな色に挑戦しても、「流行じゃないから」と気後れする必要もありませんから。
とはいえ、いくら大きな流行がないと言っても、注目すべきカラーは存在するので、以下に紹介していきたいと思います。
まずは、「強い色(ヴィヴィッドカラー)」から。
第一に目を引くのが、赤です。前回もお伝えしたように、2026年春夏は、多くのラグジュアリーブランドにおいて新しいクリエイティブディレクターが、メゾンのスタイルを刷新したシーズンとして話題になりました。そのなかでも、特に注目を集め賞賛されたブランドの代表が、シャネルでした。

新任したマチュー・ブレイジー(ボッテガ・ヴェネタから移籍)は、シャネルという豊穣なストーリーを多角的に再解釈しましたが、色の視点からみると最も強い印象を残したのが赤でした。
赤は色の三原色の一つですが、まさにその原色のレッドと呼べる色がさまざまなルックに登場。
写真は、ココ・シャネルが最愛の恋人(ボーイ・カペル)の男物のシャツを愛用していたという物語から生まれたルックですが、メンズ仕立てのシャツ(パリの老舗シャツメイカー、シャルべとのコラボ)に合わせられたのが、真っ赤なロングスカートでした。シャネルといえば、ベージュや黒が思い浮かびますが、そのベーシックなカラーを最も強く引き立てるのが「レッド」だったのかもしれません。
同じくクリエイティブディレクターが交代したグッチでも、コレクションのファーストルックに据えられたのは鮮やかな赤のコートでした。60年代風の華やかでグラマラスな女性像が浮かびます。
鮮やかなブルーのバリエーションも豊富に登場しています。ジルサンダーはロイヤルブルーのドレスでシャープなカッティングの美しさを強調し、フェンディはスカイブルーでベーシックなシャツドレスに上品な快活さをプラス。

強いグリーンとイエローは主役にするのが難しい色ですが、レガシーに現代性をプラスしたディオールでは彩度の高いグリーンがコートで登場。ロエベは強いレモンイエローで夏ならではのスポーティさを表現しています。


次に、パステルより優しい印象のパウダリーカラーをご紹介します。
ステラ・マッカートニーはパンツのアンサンブルにベビーピンクでフェミニンさをプラスし、ジヴァンシィはクチュール感溢れるロングドレスをクリームイエローで若々しく仕上げています。


また、優しい色調のなかでもうひとつ注目したいのが、ナチュラルなベージュです。コム デ ギャルソンは、麻やジュートを洗いにかけたナチュラルな素材で新鮮なアヴァンギャルド感を表現。マックスマーラでは、ブランドのアイコンカラーのベージュを、ドレスなどより軽やかな夏の装いに用いていました。
以上、強い色と優しい色を対比させてご紹介しましたが、実際の着こなしでは、ヴィヴィッドカラーとソフトな色調を合わせたり、同系色のグラデーションでコーディネートしたり、とさまざまな組み合わせができるので、自由でポジティブな気持ちで色を楽しむシーズンにしてください。
★インテリアのヒント
2026年春夏のランウェイでは、原色と淡い色の両極端が同時に登場しているトレンドを紹介してきましたが、次にインテリアの例として、強い色と優しいカラーの使い方の例を見ていきましょう。
まず、強い赤を壁に使うのは、なかなか難しいものですが、光の入り方を計算することで、華やかかつ優雅な空間を演出することができます。

日本建築でも、金沢では伝統的に朱塗りの壁が多く見られます。弁柄(べんがら)という、防腐・防虫・耐久性に優れた赤色の顔料が、漆喰壁などに使用されていました。雨や雪の多い金沢では、温かみがあって室内を明るくし、艶やかな印象を感じさせてくれる、という理由から朱塗りの壁が好まれたそうです。
金沢の例にもあるように、直射日光が当たらない赤の壁の方が落ち着いた印象が生まれるでしょう。グレーや白と組み合わせると明るさも加わり、シックな印象が楽しめます。
コバルトブルーのような彩度の高い青は、あえて明るさを楽しむインテリアとして、観葉植物や大ぶりのフラワーデコレーションと組み合わせてみるのもおすすめです。

グリーンはインテリアに馴染みやすい色ですが、深い色調ならクラシックに、淡いトーンであればポップなイメージが演出できます。


大胆なレモンイエローは、グレーとの相性がよく、温か味のあるモダンな空間を作る際に適しています。

パウダーピンクは、同じトーンで揃えても、強い色と組み合わせても、優しさと落ち着きを感じさせてくれるので、インテリアにおいては場所を選ばない万能カラーと言えるでしょう。

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渡辺三津子氏 プロフィール
資生堂の企業文化誌『花椿』から編集のキャリアをスタートし、複数のインターナショナル・ファッション誌を経て、2000年『ヴォーグ ジャパン』編集部へ。2008年に編集長に就任。2022年に独立し、ファッションジャーナリスト、コンサルタント、エディターとして活動中。
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