2025.08.28
ファッション
第1回 2025年秋冬コレクションから見るトレンドカラーとインテリア<ブラウン編>
「トレンドカラー」についてファッションの観点から語る連載コラムをスタートすることになりました。
では、そもそも「トレンドカラー」って誰が決めているの?という疑問が湧きますよね。さまざまな業界にトレンドカラーが存在しますが、最初にファッション界がリードし、インテリア業界はそれを2年後くらいに追う、という話を聞いたことがあります(世の中の動きが早くなっているので、今ではそのタイムラグも縮まっているかもしれませんが)。
いずれにしても、新しいスタイルをシーズンごと(半年に一度)に発信するファッションは、システム的にもムード的にもさまざまなトレンドをリードする役割を担っていることは確かです。ですので、ファッションの流行色を読み解くことから、ライフスタイル全般にその流れを応用し、自分らしく楽しむヒントにしていただければと思っています。
「トレンドカラー」を予測、発表する機関や会社が複数あるなかで、よく知られたもののひとつにパントン社の「カラー・オブ・ザ・イヤー」という発信があります。パントンは長年、世界中のクリエイターやデザイナーなどの仕事に使用されている最も有名な色見本帳を制作するアメリカの会社です。毎年12月に翌年の注目カラーを発表するのですが、2025年度は「モカ・ムース」でした。
具体的にイメージするならば、その名のスイーツを思い浮かべてもらうのがいちばんだと思います。茶系の濃淡の差はありますが、少しミルキーで柔らかなテクスチャーを感じさせるまろやかさが特徴になります。2025年春夏コレクションでは、早速、新鮮な注目カラーとして登場していました。実は春夏シーズンのショーは、2024年の9月〜10月にかけてNY、ロンドン、ミラノ、パリという順番で“モードの主要都市”(その前後に東京など世界の数都市でも開催)において開催されています。ですので、パントンの流行色予測よりファッションの方が早かった、というふうに解釈することもできますね。
通常、春夏のファッションにおいて茶系の色が人気になることは珍しいことです。しかし今年は、それが反対にフレッシュに感じられ、レザーやシルクといった上質な素材感との組み合わせによって“春夏のブラウン”が大人のムードを演出していました。
さて、実際にはまだまだ暑い8月ですが、店頭には秋冬シーズンのファッションが並び始めています。気分を先取りして、注目したいトレンドカラーをこれから順にご紹介していきたいと思います。
1. 温かみのあるブラウン
まず、第一に注目は、春夏から続く茶系の色。秋には深みとコクを増し、温かみのある素材と相まってその存在感をさらに強くしています。「カラー・オブ・ザ・イヤー」の“モカ・ムース”にダークチョコレートやコーヒー、ココア、マロングラッセなどが加わった感じでしょうか。すべてスイーツ系で表現したのは、モカ・ムースから続く美味な豊穣感と、包まれるようなまろやかさや密度感を表現したかったからです。
このように優しさを感じさせるブラウンが流行色に浮上したのは、現在の世界情勢と関係があるかもしれません。不透明で不安な空気が社会に増しているなか、安らぎや落ち着きを求める人々の心の表れだと捉えることもできるのではないでしょうか。ブラウンは黒と並んでファッションのクラシックな定番色ですが、はっきりと強い黒よりも茶色が選ばれたことにその意味があるように感じます。
素材はレザーやウール、スエードなどさまざまな形で登場していますが、そのテクスチャーごとに表れるトーンやタッチの違いを組み合わせてトータルルックとしてブラウンのグラデーションを楽しむのもおすすめです。具体的なブランドとしては、上品なベージュのイメージが強いマックスマーラが、今シーズンは深みのあるブラウンのコーディネートを提案。人気のテディベア コートやムートンベスト、スエード、ニットなどで素材感豊かに展開しています。エルメスは、メゾンのアイコンでもある王道のレザールックを、アクセサリーまで含めた上質なブラウンの色調でリズミカルに表現。
また一方でこのトレンドは、数シーズン前から話題となった「クワイエットラグジュアリー」の流れが、よりフェミニンな温かみをプラスしたスタイルに変化し、ブラウンが注目カラーの筆頭に躍り出たとも考えられます。これ見よがしではない洗練、落ち着きを求める方々には、今シーズンぜひトライしてみてほしいカラーパレットです。
写真ご提供・問い合わせ先
・Max Mara / マックスマーラ ジャパン 0120-030-535 https://jp.maxmara.com
★インテリアのヒント
もともとマホガニーなど木材の色として茶系はインテリアの基本色といえるので、取り入れやすいトレンドといえるでしょう。やさしい気分を盛り込みたいなら、スイーツが醸し出すようなまろやかさやリッチ感、幸福感を喚起させる奥深いテクスチャーを意識するのがおすすめ。茶系同士の洗練された濃淡や明暗のコンビネーションにもぜひ挑戦してほしいと思います。
また、ゴールドとも相性抜群なのがブラウンの魅力。ピクチャーフレームや照明器具などのアイテムにゴールドを効かせると、一気に華やかなムードが演出できます。ブラウンが少し重たく感じる場合は、ニュアンスのある白と組み合わせることで抜け感ができて明るく快活なリズムが生まれます。次回以降にご紹介するさまざまな個性的なカラーとのマッチングも幅広く引き受ける「王道」のブラウンは、インテリアの中心的存在として頼もしいベースになってくれることでしょう。

渡辺三津子氏 プロフィール
資生堂の企業文化誌『花椿』から編集のキャリアをスタートし、複数のインターナショナル・ファッション誌を経て、2000年『ヴォーグ ジャパン』編集部へ。2008年に編集長に就任。2022年に独立し、ファッションジャーナリスト、コンサルタント、エディターとして活動中。