2025.10.14
カラーコンサル
蓼科のオーベルジュ「ホテル ドゥ ラルパージュ」の色彩設計
今回は、長野・蓼科に佇むオーベルジュ「ホテル ドゥ ラルパージュ」様の色彩設計事例をご紹介します。
ホテル ドゥ ラルパージュ
このプロジェクトは、単なる色選びを超え、オーナー様の持つ「フランスの邸宅のような上質さ」という揺るぎないビジョンを、Farrow&Ballの色彩と質感で具現化しました。


オーナー様ご自身が感じられた、Farrow&Ball採用の真価と、お客さまの反応を交え、その物語を深くお伝えします。
ホテル ドゥ ラルパージュを彩るFarrow&Ballの色
ホテル ドゥ ラルパージュが提供するのは、わずか全12室という限られたゲストのための特別な時間。
そのため、一律の配色を採用するのではなく、各客室が持つ構造、光の入り方、そして個性に合わせて、多様なFarrow&Ballの色彩を丁寧に使い分けました。
例えば、一部の客室はヨーロッパらしい涼やかな色調でまとめられ、屋根の傾斜を活かした空間が非日常の魅力を提供しています。

一方で、別の客室は落ち着きのある温かい色調を基調とし、深い安堵感とくつろぎを演出しています。
2F客室に使用されたこの白は色彩計画を進める中で、オーナー様が「一番お気に入りの色」として挙げられたNo. 59 New Whiteです 。

どの客室も色を使って安心感やリラックス空間を演出し、単なる宿泊スペースではなく、「帰りたくなる場所」として安らぎの部屋を実現しました。
また、ウィンターガーデンや回廊、廊下など、いたるところにNo.2009 Clunchが使用されています。
この白も「穏やかさ」「リラックス感」「安心感」を伝える色です。

この色を選ばれた理由は、「黄色味を帯びた明るいニュートラルカラーなので、色が薄いのに冷たさが無く、暖かみがある」点 。
蓼科の清澄な光を浴びても、空間全体が冷え込まず、常に優しく、温かい雰囲気で満たされる。この絶妙なニュアンスこそが、オーナー様の求める「安らぎ」の核心でした。
同じNo.2009 Clunchの白でも、朝、昼、夜、様々な表情を魅せてくれます。
また、No.2009 Clunchは、 Farrow&Ballの生まれたイギリス東部の石灰石の色です。No.59 New Whiteのクリーミーなやさしさとは異なる石灰石特有の柔らかさがあります。床に使われた石灰石の延長でもあります。




Farrow&Ballだからこそ実現できた「色の美しさ」
オーナー様は、Farrow&Ballの塗料を採用して良かった点として、「色が美しいこと。色調が複雑で深みがあるので、格調があって飽きが来ない」を挙げられました 。
その美しさの秘密は、色調の複雑さと深みにあります 。また、「薄い塗装膜に奥行きを感じられるのは素晴らしい。薄っぺらい色の単純なキレイさとは全く違う」と、その格調の高さを評価されています 。この深みが、空間に飽きのこない上質な印象をもたらします。

Farrow&Ballの色彩の特長は、光の変化によって色が柔らかく移り変わり、お客さまにとって唯一無二の色になります。この変化を「一つの色を何重にも楽しめる」と、オーナー様は感動してくださいました。



「光によって見える色が変わる」ため、朝から昼、そして夕方にかけて光が移ろうのに合わせて、空間の趣きが変わる感覚があります 。この生きているような色彩が、ご滞在の時間を豊かに彩ります。
また、仕上げについて、「マットな仕上げが落ち着いた感じを出しているのもとても良い。マット仕上げ、グロス仕上げの両方があり、グロッシーな仕上げも色に深みがあるので、塗料の質感を堪能できる」と、質感への満足度も非常に高いものでした 。
安心感を伴う色彩の「体系化」
大規模なホテル全体の色彩計画において、オーナー様が心強さを感じられたのは、Farrow&Ballの色が体系化されていることでした 。
Farrow&Ballの体系化された色彩パレットを用いることで、ゲストは客室ごとに異なる色彩の物語を巡ることができます。そして、それぞれが独自の表情を持ちながら、全体として見事に調和し、ホテルのコンセプトである『上質で快適な日常』という静謐な心地よさを創出していました。


体系化されたカラースキーム
「ニュートラルカラーを中心に、カラースキームを整えるのがそんなに難しくないため、ホテル全体の色を構成しやすい。そうでないと、その時その時で異なる自分の感覚に振り回されてしまって大変。Farrow&Ballの推奨組み合わせは非常に美しく、これに従えば上手く出来るという安心感がある。」というお話もいただきました。
「どの色にも、その色が最も映えるニュートラルカラーが指定されているので、ベース色を決めての配色がしやすい」ことも、複雑な計画をスムーズに進める上で不可欠でした 。
お客さまが感じる「邸宅らしさ」と色の物語
実際にホテルを訪れたお客さまからも、色彩に対する高い評価が寄せられています 。

「フランスの邸宅らしさを表現しているちょうど良い質感とカラー」という声は、オーナー様のビジョンがそのままゲストに伝わっている証です 。レセプションに飾られたFarrow&Ballの書籍をご覧になり、「素敵」とうっとりされるお客さまもいらっしゃいました。

また、色彩の名前への関心も高く、レセプションの「ボールルームカラー」や螺旋階段の「ピジョン」などそれぞれが特徴的で面白いと楽しまれています。
実は、螺旋階段のカラリングには、霧のかかった空(No.266 Mizzle)の中、石灰石(No.2009 Clunch)の塔の外をぐるぐる回りながら、鳩(No.25 Pigeon)が高く飛んでいくイメージが重ねられているとのことです。色のイメージを適切に説明するネーミングのおかげで、色選びが非常に楽しいものになります。

色彩が、空間の品格を高め、オーナー様のこだわりを具現化し、そしてゲストとの会話を生み出す。蓼科のオーベルジュ「ホテル ドゥ ラルパージュ」様は、Farrow&Ballのカラーコンサルティングの価値を体現する、特別な事例となりました。
Farrow&Ballのカラーコンサルティングは、単なる色選びではなく、オーナー様の理想とお客さまの体験を深く結びつける空間設計です。蓼科の静謐な空気の中で、洗練された色彩が織りなす「ホテル ドゥ ラルパージュ」様の空間美を、ぜひご体感ください。
